KURONEKO diary

日々の徒然

好きを仕事に

「好きを仕事にする」そう言われ始めたのは何年前の事だったか。

趣味起業や女子起業という言葉が生まれ、起業ブーム、ハンドメイドブームとなんとなく気持ちが落ち着かないざわざわした時期があったが、それも下火となりゆっくりと静かになりつつある今日この頃。

一念発起して起業して成功した人もいれば、どこでどう間違ったのか人生を踏み外してしまった人もいたりして…。まぁ、他人のことなどどうでもいい。

 

先日ふっと、自分のパートの仕事について考えてみた。

はじめは次女の大学の授業料を稼ぐために渋々近所のスーパーでパートをすることを決めたが、早いものでもう3年目。すっかり仕事に慣れ生活の一部となっている。

洋裁の事を考えれば、パートに行く時間で思い切り好きなことが出来るのに…と思わなくもないが、パートで働いて得ている安定した収入には代えがたい。

なによりも、今の職場は私にとって何の不満もないのである。人間関係も問題なし、仕事も結構気に入っている、収入もそこそこ。ええやん、今の仕事。

 

好きを仕事に。

何も起業しなくとも好きな事で収入を得る事は出来る。自分の適性をよく考えて選べば私みたいなパートタイマーでも好きを仕事にすることは出来るのである。

私は黙々と作業する事が好きだ。逆に接客は苦手。別に人見知りとかではないが、接客業は精神的ストレスが大きい。表に出るような仕事よりも誰にも知られずにひっそりと何かをしているような仕事が性に合ってるのである。

今は、スーパーのバックヤードの一番奥、水産部門のさらにすみっこでひとり刺身を作っている。数年前は某ファーストフード店の奥で仕込みの仕事をしていた。レタスを洗ったり、トマトを切ったり、地味な仕事である。その仕事も結構気に入ってた。店長がバイトとデキちゃって、職場の人間関係がややこしくなるまで5年ほどそこで働いた。

 

ふたつのパートの仕事はどちらも調理の仕事だ。別にそういう仕事を選んでしていたわけではなかったのだが、自然とそうなった。

家事の中では料理が一番好きである。気がのっていると半日以上台所に立って何かを作っている事もあるほど。だから今の仕事もストレスなく出来ているのだろうと思う。

洋裁の仕事も黙々と手を動かす仕事である。接客が苦手なため委託で自分は奥に引っ込んだまま誰にも知られずにひっそりと作り続けたいと思っている。

 

しかし、実はただ裏方に徹してひっそりと奥に引っ込んでいるわけではないのである。今のパートと洋裁の仕事、どちらも『作る』と言う仕事だ。私という人間は誰にも存在を知られることなく仕事をしているのだが、私がした『仕事』は確実にそこに『ある』のである。常に店に並べられ、人々の目に触れている。私が作った『もの』を誰かが買って、それを着たり食べたりしているのだ。

実は私は自己顕示欲が強いのである。

自分自身は人前に出たくない、だけど目立ちたい。その両方を満たす仕事が『作る』という仕事なのだ。

 

今日もスーパーの鮮魚売り場で、自分が作った刺身が店頭にずらりと並べられ、人々がそれを買っていく様を眺めては悦に浸るのである。

 

 

 

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